増築迷路で起きる日常と非日常――石黒正数『外天楼』徹底解説|どこで読めるかも紹介!

2025/04/19

増築迷路で起きる日常と非日常――石黒正数『外天楼』徹底解説

日常ミステリかSFか?読めば読むほど引き込まれる『外天楼』の世界

石黒正数といえば『それでも町は廻っている』や『木曜日のフルット』など、日常と非日常を絶妙に織り交ぜた作品で知られる漫画家です。
本作『外天楼』は、そんな石黒氏の“異色作”とも呼べる一冊であり、講談社より2011年に単行本化されたミステリSF作品です。

一見すると軽妙な日常系ミステリのようでいて、物語が進むにつれて予想を裏切る重厚なテーマと衝撃の展開が待ち受けています。この記事では、そんな『外天楼』の魅力をたっぷりとご紹介いたします。


あらすじ紹介:舞台は迷路のような奇妙な建物「外天楼」

「外天楼」イメージ画像。


物語の舞台は「外天楼(がいてんろう)」という奇妙な集合住宅。度重なる増改築の結果、まるで九龍城のような迷路と化したこの建物では、「出入り口が飲食店の厨房を通らなければならない」などの常識外れな構造が日常茶飯事です。

第1話は、3人の男子中学生がエロ本を手に入れ、その出どころを推理するという思春期らしいエピソードからスタート。この一話だけ見ると、どこか牧歌的な日常系ミステリにも思えるでしょう。

しかし、この物語はただの“ゆるい短編集”では終わりません。


世界観の拡張と時系列の妙

第2話では前話から10年後、成長した登場人物たちが「宇宙刑事ごっこ」をベースに、敵組織の幹部と警察に通報されるという不可思議な展開を描きます。
ここから、世界観は次第にSF色を強めていき、人型ロボットや人工生命体といった要素が登場。外天楼という建物だけでなく、物語のスケールそのものが一気に拡張されていきます。

読者は、前話とのつながりを感じながらも「時系列がどうなっているのか?」と頭を悩ませることでしょう。しかしこの“混乱”こそが本作の魅力でもあります。


新米刑事・桜場冴子の迷推理劇

「外天楼」桜場冴子イメージ画像。


中盤(第4話)から登場する警視庁の新米刑事「桜場冴子」は、自他共に認めるミステリマニア。彼女は数々の事件現場で“迷推理”を炸裂させ、周囲を困惑させます。

・密室トリックの推理
・ダイイングメッセージの解読
・人工生命体絡みの事件考察

いずれも定番のミステリ要素を踏襲しつつも、舞台が「外天楼」であることにより常識が通用しません。そんなトリックと真相の“ズレ”が、コミカルでありながらサスペンスフルな雰囲気を生み出しています。


物語は一転、衝撃の終盤へ

終盤では、物語の中心が1話に登場した姉弟に移り、雰囲気は一気にシリアスに。
ロボット、人工生命体、そして歪んだ人間関係が複雑に絡み合い、外天楼で起こる連続殺人事件へと発展していきます。

それまでのコミカルで緩やかな展開から一転、物語は重く、そして陰鬱な真実へとたどり着きます。桜場刑事が対峙する“真実”の描写は、読者に深い衝撃と哀しみを残すことでしょう。

とくに、回想によって明かされる動機とその背景は、本作全体に対する印象を根底から覆す力を持っています。


『外天楼』の魅力と評価ポイント

◆ 巧妙に伏線を散りばめた連作短編構成

本作は一話完結型の短編を連ねながら、後半になるにつれて一つの大きな事件へと収束していく構造が取られています。この構成こそが“石黒正数らしさ”とも言えるでしょう。1話ごとに小さな謎を提示しつつ、全体では1つの物語を形成している手法は見事です。

◆ SFとミステリの融合

「人工生命体」「ロボット」「未来技術」などのSF要素と、「密室殺人」「ダイイングメッセージ」といったミステリ要素が高次元で融合。特に、外天楼という一種の“密室”を舞台に展開される事件は、常識が通用しないトリックの宝庫です。

◆ 結末の“喪失感”が心に残る

読後感としては、決してスッキリとはしません。多くのキャラクターが救われない結末を迎え、物語に残されたのはどこかやるせない喪失感。しかしこの後味の悪さこそが『外天楼』の魅力でもあります。


『外天楼』はどこで読める?

◉ イーブックジャパンで読む

大手電子書籍サイト【イーブックジャパン】では、『外天楼』を配信中。
無料試し読みも可能な場合があり、気軽に作品の雰囲気を味わうことができます。

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◉ ブックライブでも配信中!

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ホラー作品の特集や割引キャンペーン対象になることもあるため、定期的なチェックがおすすめです。

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まとめ:『外天楼』は異色にして傑作の一冊

『外天楼』は、ただのミステリでも、ただのSFでもありません。
日常の延長線上に非日常を忍ばせ、読者をじわじわと深みへ引き込んでいく――石黒正数ならではの構築力が光る傑作です。

笑って読める第1話が、まさかあの結末につながっていくとは。
たった1巻でここまで読者の印象を変える作品は、他にそう多くはありません。

ミステリ好き、SF好き、石黒作品ファンにはもちろん、「読み応えのある1冊を探している」という方にも強くおすすめできる『外天楼』。ぜひ、その目でこの奇妙な建物と、そこに住む人々の物語を確かめてください。

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