雨の日に現れるカエルの怪人――サイコサスペンス漫画『ミュージアム』徹底レビュー
雨の日に現れるカエルの怪人――サイコサスペンス漫画『ミュージアム』徹底レビュー
『ミュージアム』とは?雨の日に始まる悪夢の連続殺人劇
巴亮介によるサイコサスペンス漫画『ミュージアム』は、2013年から2014年にかけて『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載され、2016年には新装版が刊行されると同時に、実写映画化もされた話題作です。
本作『ミュージアム』は、猟奇殺人事件とそれを追う刑事の執念、そして家族の絆を軸に展開される、張り詰めた空気と狂気に満ちたスリラーです。
主人公・沢村久志刑事と、カエルの着ぐるみを被った怪人“カエル男”との息詰まる対決が、読者に深い緊張と衝撃を与えます。
あらすじ:連続殺人事件の裏に潜む、正義を騙る怪物
物語は、刑事・沢村が担当する異様な殺人事件から幕を開けます。
若い女性が犬に生きたまま食い殺されるという残酷な殺害方法に、続いて引きこもりの男性が凌遅刑のように徐々に身体を削がれながら殺される事件が発生。
一見無関係に思える凄惨な事件には、“裁判員制度”という共通点がありました。被害者たちは、かつて「幼女樹脂詰め殺人事件」の裁判員として関わった人物たちだったのです。
やがてその矛先は、沢村の妻・遥にも向かい、彼女と息子・将太の身に危険が迫ります。
犯人は芸術家を気取る殺人鬼――“カエル男”の狂気
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「ミュージアム」カエル男イメージ画像。 |
『ミュージアム』における最大の衝撃、それは犯人・カエル男の存在です。
カエルのマスクを被ったこの怪人物は、芸術家を自称し、「罪と罰」をテーマにした“見立て殺人”を繰り返します。
・『ドッグフードの刑』=犬を保健所に送った女性を犬に殺させる
・『母の痛みの刑』=被害者の母親が味わった苦しみを肉体的に再現
といった形で、殺害対象に独自の“罪”を見出し、自己満足的な“罰”を下すのです。
しかも彼は、単なる遺族による復讐ではなく、生まれつき殺人に快楽を見出す“生粋のサイコパス”。被害者を選定し調査する手腕も卓越しており、調査能力・行動力共に非常に高く、まるで犯罪者のプロフェッショナルとも言える存在です。
主人公・沢村久志の悲壮な戦い
物語の主軸を成すのは、家族を守るために常軌を逸した行動に出る刑事・沢村の姿です。
捜査から外されながらも、独自に犯人の足取りを追い、違法な手段に手を染めながらも愛する妻子の行方を探す彼の姿は、サスペンスに人間的な深みを与えています。
・違法銃器の入手
・民間人への脅迫
・警察の枠を超えた追跡行動
法の番人であるはずの沢村が、“法を無視してでも守りたいもの”に突き動かされる姿は、読者に強い共感と同時に問いを投げかけてきます。
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「ミュージアム」イメージ画像。 |
『ミュージアム』の見どころと魅力
✦ 恐怖を可視化した「見立て殺人」
“〇〇の刑”という形でなされる殺人は、その手法も残酷ですが、被害者の“罪”を暴くような内容であることが、読者に倫理的な揺さぶりを与えます。「本当にその人は罰を受けるべきだったのか?」と考えさせられる演出は、単なるグロテスクな描写以上の恐怖を生み出しています。
✦ 追う者と追われる者の知能戦
カエル男の周到な計画と沢村の執念がぶつかり合う中盤以降は、まさに知恵と根性のぶつかり合い。予測不能な展開と、錯綜するトリックはサスペンス好きにはたまらないポイントです。
✦ 映画『セブン』に通じる“芸術的殺人”の恐怖
『ミュージアム』はしばしば映画『セブン』と比較されることがあります。連続殺人、芸術を気取る犯人、家族を狙う陰謀――確かに類似点は多いですが、日本的な裁判員制度や主人公の葛藤を軸にした点で、本作独自のアイデンティティも持っています。
『ミュージアム』はどこで読める?
◉ イーブックジャパンで読む
大手電子書籍サイト【イーブックジャパン】では、『ミュージアム』を配信中。
無料試し読みも可能な場合があり、気軽に作品の雰囲気を味わうことができます。
◉ ブックライブでも配信中!
【ブックライブ】でも『ミュージアム』を配信中。
ホラー作品の特集や割引キャンペーン対象になることもあるため、定期的なチェックがおすすめです。
まとめ:『ミュージアム』は恐怖と哀しみが交錯するサイコサスペンスの傑作
巴亮介の『ミュージアム』は、サスペンスというジャンルの中でも特に「狂気」と「人間の限界」を描いた作品です。
犯人の異常性と、そこに立ち向かう人間の極限の行動は、単なる犯罪劇にとどまらず、読者に倫理・愛・正義といった根源的なテーマを投げかけてきます。
重厚でグロテスク、だけど人間的。そんな相反する要素が同居する『ミュージアム』。
サスペンスファンだけでなく、骨太な人間ドラマを求める読者にもぜひ手に取ってもらいたい、静かに爪痕を残す一冊です。
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