心を持たない連続殺人鬼――サスペンス漫画『脳男』の深層に迫る
心を持たない連続殺人鬼――サスペンス漫画『脳男』の深層に迫る
江戸川乱歩賞受賞作を鬼才が漫画化!『脳男』とは?
連続殺人鬼でありながら“正義”を体現するかのような存在――それが『脳男』。
原作は首藤瓜於(しゅとう うりお)による江戸川乱歩賞受賞のサイコ・サスペンス小説で、2013年には外薗昌也の作画により漫画化、さらに翌年には生田斗真主演で実写映画化され話題を呼びました。
本記事では、全1巻にまとめられたサスペンス漫画『脳男』のあらすじ、登場人物、そして作品の持つ独特な魅力を徹底的にご紹介します。
「脳男」とは何者か?
善と悪の境界線を揺るがす衝撃作に迫ります。
『脳男』あらすじ:殺人鬼が正義となる世界
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「脳男」イメージ画像。 |
物語は、警察が連続爆破事件の主犯・緑川を追って潜伏先に踏み込むところから始まります。そこで目にしたのは、緑川と取っ組み合う謎の男――それが、後に「脳男」と呼ばれる鈴木一郎でした。
緑川を取り逃がした警察は、謎の男を容疑者として拘束。精神科医・鷲谷真梨子に彼の精神鑑定が依頼されます。しかしこの男、どれほど質問しても感情が見えず、まるで「脳だけで動く存在」のよう。鷲谷はやがて、彼が「人間の悪を裁く殺人鬼」であると知るのです。
彼は悪を排除しているのか、それともただの冷徹な殺人者なのか――
心を持たない“正義”が暴かれていく過程は、読者に善悪の本質を問いかけてきます。
登場人物紹介
◆ 鈴木一郎(脳男)
本作の主人公にして謎の存在。「脳男」という異名は、精神科医・藍澤が名付けたもので、「意思のない脳だけの男」という意味が込められています。自らの感情を徹底して封じ、犯罪者に対しては無慈悲な制裁を加える姿は、ヒーローなのか怪物なのか判断に迷う存在です。
超人的な戦闘力や身体制御能力を持ち、まさに人間離れしたスペックを誇りますが、その背景には祖父による過酷な教育と、育成者たちの思惑が渦巻いています。
◆ 鷲谷真梨子(わしや まりこ)
脳男の精神鑑定を担当する精神科医。事件の語り手であり、読者の視点を代弁する立場でもあります。犯罪心理学の専門ではないながらも、脳男の謎に迫ろうと真摯に向き合います。
彼女の存在が、脳男の“人間らしさ”を浮かび上がらせる大きな鍵となります。
◆ 緑川
連続爆破事件の犯人。冷酷かつ狡猾で、物語中盤から終盤にかけて再び暗躍します。警察の不手際により逃亡を許され、脳男たちにとっては“本当の敵”として立ちはだかります。
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「脳男」緑川イメージ画像。 |
作品の見どころ
◉ 機械のような“正義”の男の人間性
『脳男』の最大の魅力は、主人公・鈴木一郎のキャラクター性にあります。
「感情を持たない殺人鬼」として描かれながらも、読み進めるにつれて人間的な一面や過去の傷が垣間見えます。特に、ヒマラヤ登頂のエピソードや祖父との確執は、彼がただのサイコパスではないことを如実に物語っています。
◉ 精神鑑定という視点の新しさ
脳男をただのサスペンスアクション作品として描くのではなく、鷲谷による“精神鑑定”というプロセスを通じて彼の内面を掘り下げていく構成が秀逸です。
脳男を理解しようとする鷲谷の視点があることで、読者もまた彼に対して単なる恐怖ではなく、複雑な感情を抱くようになります。
◉ 緊迫感あふれる終盤のアクション
終盤には逃亡した緑川が再び牙をむき、警察や鷲谷らに危機が迫ります。そこに現れるのが、まるで救世主のように立ちはだかる脳男。その戦闘シーンのスピード感、超人的な動きは、漫画という表現媒体だからこその臨場感が光ります。
原作と漫画版の違いについて
原作『脳男』は2000年に刊行された小説で、重厚なサスペンスと心理描写が中心です。
一方、漫画版は全1巻という制限から、原作の複雑な要素をある程度削ぎ落とし、脳男というキャラクターに焦点を当てたストーリー展開となっています。
特に脳男が起こしたとされる事件の詳細や、鷲谷との関係性など、原作では深く描かれている部分が簡略化されているため、「脳男」という存在により迫りたい場合は原作小説の併読をおすすめします。
まとめ:『脳男』は善悪を超える“問い”を突きつける
サスペンス漫画『脳男』は、ただのダークヒーローものではありません。
感情を持たない殺人者が“正義”の名のもとに悪を討つというストーリーは、読む者に「正義とは何か」「人間らしさとは何か」といった深いテーマを突きつけてきます。
シリアスなストーリーと濃密な心理描写、そして息を呑むアクション。
全1巻とは思えない読み応えで、サスペンス漫画やダークヒーローものが好きな方には特におすすめの一作です。
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